いかなてて |能登半島の珠洲市にあるスパイスカレーとコーヒーのお店

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かぶら寿司

季節の手仕事記録。

石川県の伝統食、カブの間に鰤やサバなどを挟んで糀に漬け込んだ熟鮓、かぶら寿司。東京から奥能登狼煙に移住してきた一昨年の冬、地元の方から人生初の手作りかぶら寿司をいただく。

糀は好きで、でもそれ系の漬物があまり好きではないので恐る恐るいただいたら、とっても美味しい!鰤の旨み、塩気と甘酸っぱさ、カブの気持ちいい食感が、なんとも言えない美味しさ。

これは、是非毎年の手仕事にしたいものだと思いつつも、去年の冬は娘みちるがお腹の中に居て、何をするにもやっとこさで出来なかったのだけど、今年は近所のお友達、東京から珠洲に移住して10年近い先輩でもあり、同級生の母でもあるシボちゃんから教わって、はじめてのかぶら寿司作りができたので、その記録を。

シボちゃんに教えてもらいながら、かぶら寿司は、手間はそんなに多くないものの、ひとつひとつの工程に時間をかけるのだと知る。カブと魚を合体させて甘酒に漬けるまでに3.4日、漬けたらそこから食べられるまでにまた3日。その後は発酵が進んで味に変化が出てくるのを楽しみながら、ちょっとずつ食べていくのだそう。

それぞれのお家の味、色んなレシピやコツがあるようだけど、こんな感じでやりました。

15センチくらいの大きなカブを用意。皮を厚く剥く。硬いところが残っていると食感が悪くなる。剥いたら縦半分に切って、横に1.5センチくらいの幅に切る。真ん中に、ギリギリ繋がるくらいで、魚を挟み込む為の切り込みを入れる。重さの3%の塩を振って、重石をして3、4日間漬ける。2日目には水が上がってくるのが理想。水が上がったら毎日朝晩水を揺らす。

カブをつけて3日目、鯖と合体させる前日、甘酒を仕込む。この時のお米を炊く水の量や、温度管理がなかなか、いい塩梅が難しい。。硬すぎても緩すぎてもいい感じにつからないし、温度によって色が茶色く変わったり。ここはシボ先輩がやってくれた。とても綺麗な、もったりとした白くていい感じに仕上がる。塩鯖も同じタイミングで酢締めにする。酢で濡らしたキッチンペーパーで鯖を巻いて冷蔵庫へ。

4日目、いよいよ合体!戻した出汁昆布、人参、柚の皮を細切り、なんば(唐辛子のことをこちらではこういったりするらしい、南蛮の訛りだろう)は種をとって輪切りに。それを甘酒と混ぜる。これがつけ糀。

これを漬ける容器の底にまず薄く敷いたら、塩漬けカブの切れ込みに、いい感じの薄さに削ぎ切りにした塩サバの酢じめを挟み込んで一段敷き詰めたら、また甘酒をかけて、を繰り返す。全部入れたら最後にぴっちりラップして、蓋を締めて冷蔵庫か、奥能登の冬の古民家は廊下に出たら冷蔵庫とさほど変わりないかあるいは冷凍庫ぐらい寒いので、廊下にでも。あとは食べられるまで3日〜寝かせる。

合体前の塩漬けのカブ・酢じめの塩鯖・つけこうじ

さて寝かせて3日目、シボちゃんからそろそろ食べ始められるよ!とリマインドが来たので、味見。甘い!甘酒の甘みが前面に来ている。カブのショキっとした歯ごたえ、気持ちいい。鯖の旨味や塩気はなんだかぼやっとしている。かぶら寿司初心者の私は色んな味を食べ比べたこともなく、this is かぶら寿司!を知らないので味の基準がいまいちわからず、これはこれで美味しいな、甘い気もするけれども、と思って、かぶら寿司玄人の我が家の大おばあちゃん89歳に味を見てもらうことに。

おばあちゃんはこっちでいういわゆる食人で、食べること、食べ物を作ること、息子たちや家族に食べさせることへの気概が本当にすごい。戦争中や戦後を経験し、食べ物の少ない、厳しい時を経験しているからこそでもあるのだろう。
長ーい間家族の食卓を支え、畑に田んぼに山に海に、自給自足が当たり前、またいかなてての前身である禄剛崎レストラン&民宿で長年腕を振るった人でもあり、もちろん奥能登の伝統食の超プロフェッショナルでもある。おばあちゃんの作るご飯はほんとに美味しい。そして、人の作るものにはなかなか辛辣である。褒めるのをあまり聞いたことがない。
そんなおばあちゃんにひとつ食べてみてもらったところ、
甘すぎるのきゃ、カブの塩気も足りなければ鯖の塩気も足らんし、おやつ程度にはなるけれども、おかずにはならんのきゃ、
とのこと。
褒められることはないだろうと思っていたけれども、初めて作ったかぶらずしへの評価はなかなかのものだった。笑
ショックを受けシボちゃんに報告したら、明日以降、甘酒の甘みが落ち着いてきてカブ・鯖・甘酒が一体感出てくるよ!と。

その言葉を信じ次の日食べて見ると、本当だった。味がぜんぜん違う!初日は甘酒の甘さがかなり際立っていたものの、たった一日の違いなのに今度は鯖の旨味や酸味を感じ、塩気も出てきて、まさに三位一体、まとまったおいしさになってきていた。
かぶら寿司を食べ慣れているお父さん、お母さんにも食べてみてもらったら、美味い!と。おばあちゃんも、次の日にも出してみたらひとつ食べて、昨日よりはまとまってきたのきゃ、と。でも、やっぱり何も塩気も足らんし、なんたらかんたら、まずいことないけども、のきゃ。だそう。

その後3日で食べきったのだけど、次の日、その次の日と、発酵がすすむにつれどんどん味が深く旨くなっていって、初めてのかぶらずし、自分で作ったからなおさら、今まで食べた中で間違いなく最高、大成功!と思うのだけど、おばあちゃんにも美味いと言わせてみたいので、また近々塩気を変えてみたりして、作ってみようと思います。
何はともあれこの、発酵食を作る手間と待つ時間、生き物を育てているような気持ち、味が変化していく様子、カブの厚いの、薄いのが好き、もっと甘く、もう少し酢を効かせて、等々、自分好みのかぶら寿司に仕上げていくのも醍醐味、なんとも言えないワクワクと楽しさがある。
ここに住む大きな楽しみのひとつ、土地に根ざした美味しいものを作ること、食べること、これからも記録していきたいと思います。

ちか